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「ブレイキング・バッド」シーズン2~仲違いの描写がリアル。恐怖とはなにか

Netflixで文字通り血眼になってブレイキング・バッドを見ています。

シーズン2を見終えて、やや脱力中。

忘れないうちに感想を書いておこう。ネタバレを含みますのでご注意ください。

(▼これまでの感想はこちら)
喜びも出口もない苦しみと乾いた笑いが交差する「ブレイキング・バッド」シーズン1全7話 - 感想ブログ

疑念のはじまりはサブケータイ

シーズン2の始まりはウォルタージェシートゥコに連れ去られた続きからです。

人里から遠く離れた荒野の小屋で、ジェシーが発砲しトゥコに重傷を負わせます。そこにウォルターを捜索中の義弟ハンクが現れ、身を隠したウォルター&ジェシーの目の前でトゥコにとどめを刺しました。このニアミス具合がたまりません。ハンクは優しくて強くて(でも弱いところもあって)いい人ですね。フリンが懐くのもわかるなぁ。

トゥコという危機的存在は消えたものの、二日間行方不明だった理由をごまかすためにヒッチハイク先の売店で素っ裸になるウォルター。抗がん剤治療の副作用で記憶障害を起こして何にも覚えていないと収容先の病院で主張します。

しかし、ウォルターが失踪しているあいだに妻スカイラーは二つ目の携帯電話の存在を疑ってしまう。失踪直前にウォルターの携帯が鳴ったのを覚えていて、それを照会にかけてしまったんですね。当然ながら照会しても着信履歴はなく、それで「彼はもうひとつのケータイを持っていたのではないか」とハンクに遠回しに言われて呆然とします。

戻ったウォルターにスカイラーは二つ目の携帯のことを聞いてみます。照会のことも含めて。焦ったウォルターは「きっと携帯のアラームが鳴ったんじゃないかな?最近のアラームはいろんな音が鳴るから訳がわからなくて困るんだまったく…」とごまかしますが、そのペラペラと陽気に捲し立てる様子がまさに「嘘を付く人」 そのもので、スカイラーの疑念はますます強くなっていくのでした。

 

離れていく心

嘘を付かれ続けている疑念が拭えないスカイラーの心は離れていきます。失踪前までは本気でウォルターの身を心配して労わるパートナーでしたが、さすがに愛想が尽きたという感じ。何も話してくれないどころか、全力で懐柔しようとしてくるウォルターに対して完全に心を閉ざし始めます

このあたりの描写がリアルすぎて、ずっとウォルター視点で見てきたこちらとしては自分が責められているように苦しかったです。心を閉ざしたスカイラーは、決して感情的な態度ではありません。むしろにこやかなんです。目は笑っていないけど。

スカイラーはよく出かけるようになります。ウォルターが「どこへ行くんだ?」と聞いても、「外へ(Out.)」と言うだけ。たった一言です。必要以上に会話なんてしないという意志が感じられます。そして車で出かけて、一日帰ってきません。数日その描写が続いたあと、車の中でタバコを吸うスカイラーの姿が映しだされます。それまで「塩分過多だから」と食べようとしなかったジャンクフードも食べはじめて、妊娠中の自分の身をイジメて反抗の意を示しているかのようです。妻の異変に気付いたウォルターは、タバコのことを問い質しますが「医師だって1日3本半までは大丈夫だって言うわ」と悪びれることはありませんでした。

 

延命とジレンマ

咳が続くウォルターはついに喀血し、先が長くないことを感じ取ります。残り少ない時間を精一杯メスの製造に当てて、できる限りのお金を残そうと「母のところに行く」とまた妻に嘘をついて数日間ジェシーと密造の旅に出ます。

大量のメスができて安心したのも束の間、ジェシーのミスによりキャンピングカーのバッテリーが上がってしまいます。バッテリーも炎上して壊れ、携帯電話の充電もなくなり、荒野で死を覚悟する二人。二日ほど経ったところで、極限状態のウォルターが自作バッテリーを考案してなんとか帰還します。別れ際、会えるのもこれで最後かと思った二人でしたが、抗がん剤治療の結果は腫瘍がなんと80パーセントも縮小しており、医師も驚くほど寛解していたのでした。

お祝いのパーティーを開いてスカイラーや家族は大喜びしますが、ウォルターは浮かない顔です。未成年のフリンに酒を飲ませたり、ハンクに大声で怒鳴ったりと苛立ちが収まらず、仕事を休んでいるあいだは家中の修理するところを見つけては大規模な工事にハマり始めます。ジェシーには「今ある分を売り切ったら引退する」と宣言。修理の道具を買いに毎日のようにホームセンターに通う中、どうみてもドラッグ密造の道具を買い込んでいる若者を見つけて「俺のシマから出ていけ」とつい口を出してしまいます。

 

恐怖とは何か

トゥコを制したことで昇進したハンクは、麻薬取締局のエリートコースとも言われるエルパソに送られますが、酷い有様を目にして古巣に戻ってきます。何も話そうとしないのを心配した妻マリ―に頼まれ、ハンクと二人で話すことになったウォルター。「俺とお前の人生では重なる(オーバーラップ)部分がほとんどないから、話してもわからない」と言うハンクに、ウォルターが語った言葉が印象深かったです。

それは「俺は今まで生きてきて、何をするのも怖かった。本当にこれでいいのか、自分は間違っていないのか、と恐怖に支配されて生きてきた。だけどガンがわかってからは、恐怖と向き合うことができた」というもの(覚えている限りなので正確じゃないかも)。ここで少しウォルターの心理が垣間見えたのですが、ウォルターにとってブレイキング・バッド(悪事に手を染める)というのは、自分の中の「恐怖」を打ち破ることなのかなと。恐怖をなくすために犯罪、というのは極端ですがそこは架空のドラマということでね。シーズン1で抗がん剤治療をするかどうかを決定するときも、しばらく悩んでいた理由を「これまで何も自分で決断したことがなかったから、どうしても自分で決めたかった」と言っていました。自分の人生を自分でコントロールすること。それがウォルターの願いであり今や生きがいでもあるのでしょう。

 

ピンクの熊さん…

シーズン2のエピソード最初に、何度も出てくる熊のぬいぐるみ。片目が取れて、ウォルター家のプールに沈んでいます。他にも「証拠品」として何かが押収されていたり、ウォルターの車のフロントガラスが割れていたり、そのそばに二つの死体袋があったり…などとかなり思わせぶりに出現する細切れのシーンです。 そういうのってたいがい未来に起こる不穏な出来事じゃないかと思うじゃないですか。だから死ぬのは誰なのかとか、車が事故っているからウォルターが狙われて家まで来られて大変なことに…とあれこれ想像していたんですけど全部ちがいました。シーズン2の一番最後につながっています。ネタバレですよ。いいですか。飛行機が落ちてきます。……は?と思いますよね。ほんと。まぁ、ウォルターに関係なくはない飛行機といえばそうですけども。大体あのジャンキーガールのお父さんて、管制官なんでしたっけ?私はてっきり不動産会社の人かと思っていたんですけど。ジャンキーガールが「父のアパートなの。私は管理人よ」て、個人で所有しているアパートだったということなんですかね。しばらく事態が飲み込めませんでした。

ぬいぐるみの色がピンクなのは、やっぱりジェシー・ピンクマンを暗示しているんですかね。ジェシーが彼女をドラッグに引き戻さなければ、彼女は死ななかったわけで、彼女の死によってお父さんがパニックを起こすこともなかった。そうすれば飛行機事故も起こらなかったはず…みたいな。でも、ああいう仕事って復帰前に何度もメンタルテストみたいなのしそうじゃないですか?アメリカなら特に。そんなこともないのかなー。かなり謎でした。

 

問題は山積みのまま次のシーズンへ

飛行機が落ちてくる前にはスカイラーがついに出て行ってしまいましたね。赤ちゃんを連れて。今までウォルターが付いた嘘は全部裏を取ってたみたいです。そのうえで、ウォルターが「全部話したら留まってくれるか」というのは「聞くのが怖いから聞きたくない」と拒否しました。大金が入ってきていて、浮気でもないとなるとウォルターがかなりヤバいことに手を出しているとスカイラーも気付いてはいるのでしょうね。そうなれば家族を守ろうとするのは当然のことです。

とりあえず赤ちゃんが無事に生まれたことにはほっとしました。大きなお腹でピンヒール履いていたり羊水がちょっと足りないと言われてたりするのが「フラグか!フラグなのか?」とドキドキすることもなくなり一安心。そうなると今度は赤ちゃんに危険が及ぶのも見ていられないのでスカイラーには全力で赤ちゃんと長男と一緒に遠のいていてほしいです。ウォルターはお金を送るだけでいいじゃないですか、もう。

スカイラーは勤め先での収益誤魔化しにもかなり胸を痛めて悩んでいましたから、夫が殺人までしたと知ったら彼女自身が壊れてしまいかねません。でも家族が居なかったらウォルターが犯罪をしてまで大金を手に入れる理由もないわけで。ガンの切除も成功したし、この先どうしていくのか気になりますね。

 

▼ミスター・ハイゼンブルグのアクションフィギュア。めっちゃ欲しい(笑)

▼次の「ブレイキング・バッド」感想記事はこちら

mythoughts.hatenablog.jp

 

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