この記事は「ブレイキング・バッド」シーズン4 第11~13話のネタバレを含んでいます。
(▼前回までの感想はこちら)
「ブレイキング・バッド」S4#6~10。ガスのことを誤解していたかもしれない - 感想ブログ
不審な言動あれこれ
ウォルターに「黙って仕事を辞めろ」と脅しをかけるガス・フリング。「もしそうしなければ、お前の家族も義弟も殺す」と警告します。この後、ウォルターはソウルを使ってDEAに「麻薬カルテルがハンクに報復しようとしている」と通報、ハンクを守らせて家族もそこへ避難させることに。
確かにここで違和感はありました。ガスは脅しをかけただけで「今すぐやる」という意味には取れなかったんですよね。話の流れ的に。ウォルターが「もし言うとおりにしなければ?」と仮定の上で話し合っているものだと思っていたから、すぐさま身支度を整えて避難をし始めるのがなんか変でした。
ガスの警告によってウォルターの気持ちが固まったのは確かです。「ガスを消さなければ、自分や家族の命が危ない」という決意。さらにハンクもクリーニング工場を怪しみ始めていて真相にたどり着くのは時間の問題。ならば、ガスも工場も消し去るしかない。いやぁ…まさかあんな方法があったとは。
ウォルターの名演技と伏線
最後に真相が明かされたあとで逆回しのようにひとつひとつの行動をなぞっていくと、ウォルターの恐ろしさが浮かび上がってきます。
特に震えるポイントは、ブロックに毒を盛られたジェシーが怒り狂ってウォルターを殺しにきたところ。
ウォルターは「自分が毒を盛れるわけがない」理由をひとつひとつ挙げていきます。
- まずその子供のことを知らない。前にドアの隙間から一瞬見かけただけで、その子がブロックという名前なのかどうかも知らなかった。(実際は子供の存在を知っている。だけど名前を知らなかったのは本当かもしれない)
- 自分が子供に毒を盛ることなんてできるはずがない。子供を平気で殺す人は誰だ。それはガス・フリングに他ならない。(実際、子供に毒を盛ったのはウォルター)
- お前が今朝まで持っていたリシンを、自分が奪えるわけがない。ガスにさらわれていたから。それを奪ったのはラボで一緒にいたガスの手下じゃないのか。(実際はジェシーの推理通りにソウルの手下がボディーチェックしたときに取らせた?)
上記のことを銃口を突きつけられながら説明するウォルター。さらに「ガスが私を殺すために誰をよこすかと思ったら、まさかお前か…」と大笑いしてみせます。ウォルターが大笑いした瞬間は少し前にもありましたよね。自宅にあると思っていたお金がスカイラーによって使われていたときのことです。あのときにウォルターは絶望のあまりに人が変わったように大笑いしたんですけど、そこで「人は絶望しすぎると笑う」というのを実感してここでも笑ってみせたのかもしれません。体験をなぞって演技に活かすのは大事ってガラスの仮面でもありましたもんね…。
「それでも疑うなら俺を殺せ!」と銃を向けるジェシーに凄むウォルター。実際、ここでジェシーにガスの仕業だと信じ込ませなければ計画は台無しになるわけだから、これでダメならウォルターに生き残る道はありません。もしかして、どうせ死ぬならジェシーに殺されたいなんてほんの少し思っていたのかなぁ。
完璧な演技をこなしてジェシーを信じ込ませたウォルターでしたが、ちょっと「あれ?」と思う場面もありました。それはブロックが入院している病院に爆弾を持ち込んでいたところです。ガスを殺しそこなって仕方なく持ち歩いていた爆弾ですが「計画のためならよその子供を犠牲にすることもいとわない人格」を表すには十分な描写でした。それに突っ込んでいたジェシーの素直さがまた尊い。
いつどうやって毒を盛ったのか
ブロックに盛られた毒はリシンではなくスズランの成分でした。
盛ったのはウォルターだとして、一体どうやったのか。チャンスがあるとしたらジェシーがラボにいるあいだですよね。ブロックがジェシーの家にいるとは限らなくても、住居はソウルが知っています。ということはソウルも抱き込まないとウォルターの計画が欠けてしまいますので、ソウルにもウォルターの息がかかっていたのではないかな。
また、リシンは使わなくてもジェシーに
「ガスがジェシーのリシンを奪ってブロックに盛った」
と思わせるため、ジェシーからリシンを奪う必要が出てくるわけです。ジェシーが自分で持っていたリシンがないことに気づいて、ない!→誰かにとられた?→敵意を持っているとしたらガスか?と考えるように仕向ける必要があったんですね。
となるとやっぱりソウルの手下がボディーチェックしたときにタバコをすり替えられたんでしょうか。チャンスがあるとしたらそこなんですよね。
複雑すぎて、考え始めると混乱してしまいそうですが、これからのエピソードでそのあたりが描かれることはあるんでしょうか…。
ガス・フリングの最期と本当の悪人
個人的にガス・フリングを日本の俳優が演じるとしたら香川照之かなって勝手に思っているんですけど、それはともかく最期まで魅せてくれました。
毒を盛ったのがガスじゃなかったことを思うと、病院でジェシーに「お気の毒に」と言ったのは本心からだったのだなぁと可哀相になりますね。最期に爆弾で顔の半分が吹っ飛びながらネクタイを締めなおしていた姿は天晴。無表情ゆえに考えが読めない人物でしたが、とても魅力的なボスだったなぁ…。
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決着の仕方といい、どんでん返しといい、とにかく最高のシーズン終結でした。
爆発がウォルターの仕業だと察したスカイラーの気持ちすごいわかる。驚きと恐怖。このドラマを見ていて初めてスカイラーに同調しました。というわけで最恐の悪人はウォルターに他なりません。いずれはハンク、そしてジェシーと決着をつけるときがくるんでしょうね。シーズンを追うごとに大きくなっていく困難を、どう切り抜けていくのかが楽しみです。
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