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「ブレイキング・バッド」シーズン1感想~喜びも出口もない苦しみと乾いた笑いが交差する

2008年からシーズン5に渡ってアメリカで放送されたドラマ

ブレイキング・バッド

伝説のドラマともいわれる作品を見るために、Netflixをお試し契約しました。

ブレイキングバッドは全部で62話あります。果たして1ヶ月の無料視聴の間に見れるかどうか。

とりあえずシーズン1(全7話)を見ましたので、感想です。かなりネタバレを含みますのでご注意ください。

ブレイキングバッドのあらすじ

アメリカ南西部の田舎町。ウォルター・ホワイトは、身重の妻スカイラー脳性麻痺長男フリンとの生活を支えるために高校で化学教師を勤めつつ、アルバイトで生活費を稼ぐ平凡なプア・ホワイトであった。学校ではやる気のない生徒たちと向き合う日々により無気力さに犯された生活が、自身に肺がんが見つかったことから運命は狂い始める。麻薬取締局に勤めている義弟のハンクから「覚せい剤が儲かる」ことを聞いたウォルターは、死ぬ前に家族に財産を残すため、低所得者層向けの覚せい剤である「メタンフェタミン」(通称メス)の密造を決意する。

ウォルターと元教え子の相棒ジェシーはメス作成を本格化させていき、純度99.1%の「ブルーメス」の開発に成功するが、それにより彼らが想像もしなかった数々のトラブルに巻き込まれる。家族を守るために始めたウォルターであったが、誰にも真実を話すことが出来ず、徐々に家族との絆を失っていき、ウォルター自身も変貌してゆく。

ブレイキング・バッド - Wikipediaより)

シーズン1はウォルターが「メス」を製造して販売するまでが描かれています。

裏取引の世界で新参者が販売ルートを確立するのは大変なこと。それにまつわるいざこざで人を殺めてしまうことも。第1話はウォルターが50歳の誕生日を迎えるところから始まります。

ドラマの最初のうちは、上記で「プア・ホワイト」とあるようにお金に困っている様子が描かれます。カードの支払い分が足りなかったり、病院に行くのをしぶったり。ウォルターがアルバイト先のガソリンスタンドで倒れて救急車に運ばれるときは「もういいから帰してくれ」とウォルター本人がしきりに言っていました。あまり詳しくは知りませんが、日本と違ってアメリカの医療費はとても高額なイメージがあります。ウォルターも肺がんの治療で抗がん剤治療をすすめられますが、やはりお金の問題はとても大きく、まずそこがネックに。

ウォルターの妻スカイラーには妹マリーがいて、その夫つまりウォルターの義弟にあたるハンクは麻薬取締局に務めています。職業柄もあってかなり強面にみえるハンクですが、とても気のいい人物。いつもウォルターを始めとするホワイト家の助けになろうとしてくれます。ハンク、好き。

 

引き返せるチャンス

まだ序盤だけあって、これまで真面目に生きてきたウォルターが犯罪に手を染めながらも「引き返す、立ち止まるチャンス」というのがたびたび訪れます。

例えば第3話、クレイジー・エイトとの対立。第1話でウォルターが起こした毒ガス爆発により重傷を負ったエイト。ジェシーコイントスで分担を決め、ジェシーは亡くなった1人を、ウォルターは生き残ったエイトをそれぞれ処理することにしました。

毒ガス爆発の時にはただ必死さから良心の呵責もないままに実行したウォルターでした。しかし、生きているエイトを殺すとなるとなかなか踏ん切りがつきません。

エイトを始末するメリットとデメリットをノートに書き出し、拘束したエイトに水や食べ物を与えながら何日も悩むウォルター。ジェシーのうっかりで、ウォルターの本名や家族のことがエイトに知られてしまったんですよね。ここでエイトを始末せずに逃がしたら、自分だけじゃなく家族も狙われるかもしれない。

しかし、エイトと会話を重ねるうちにウォルターは情がうつってしまったのでしょう。エイトが嫌いだと言っていたパンの耳を取り除いてやりながら、ウォルターの気持ちは「やっぱり殺したくない」ほうにだいぶ傾いていたのだと思います。

ある夜、ウォルターはエイトとビールを飲みながら話をします。ついさっきエイトの目前で倒れてしまった自分が肺がんであることや、エイトの生い立ちなど。エイトの実家は家具屋で、それを聞いているうちにウォルターは昔その店にベビーベッドを買いに行ったことを思い出します。そこにまだ子供のエイトが店番していたことも分かり、奇妙な運命を感じるウォルター。そしてついに逃がすことを決意。エイトの「もし逃がしてくれたら、絶対に復讐はしない」という言葉を信じて。

人を殺さなくてもいい、と半ば晴れ晴れとした表情で拘束具のを取りに行くウォルターですが、たまたま見かけたゴミ箱の中に違和感を感じます。

ここの描写がね、本当に素晴らしいんですよ。モノローグも何もなく本当に一人の人生を覗き見しているような気持ちになって、ウォルターと一緒にひどく落胆を感じてしまうんです。

ゴミ箱の中にはさっきウォルターが倒れたときに割れた皿の欠片がありました。

天才化学者でもあるウォルターは一瞬にして気がついてしまったんですね。そのピースが完全に埋まらないことに。足りない皿のかけらを、エイトが持っていなければいい。こんな予想は当たらなければいい、と祈るような気持ちでエイトに近づくウォルター。

だけどやっぱりエイトは鋭利な破片を隠し持っていて、反撃しようとしていたことがわかります。ついに涙を流しながらエイトの首を絞めるウォルター。こんなに悲痛な殺人シーンは他に類を見ません。最初にウォルターが起こしたガス爆発が発端ではあるけれど、もしかしたらここで殺人を犯すことなく立ち止まれるかもしれなかった。あまりに強烈な印象が残る話でした。

 

お金が手に入っても喜びはない

麻薬取締局の化学者にも作れないほど高い純度のメスを大量に密造するウォルター。それにより今まで手にしたこともない大金が入りますが、そこに喜びはありません。ウォルターは「家族のため」だというけれど、厳密にいえば自分が死んだあとに遺された家族が路頭に迷わないために用意しているお金です。抗がん剤治療にも莫大なお金がかかるし、息子やこれから生まれてくる赤ん坊が大学を卒業するまでの学費、生活資金。

その家族に犯罪を隠し通せる気はしないし、たとえば自分の家族がもしそういうことをしてしまったら、と思わず考え込んでしまいますね。

ちなみにウォルター、メスで稼いだお金を子供部屋(これから生まれてくるほう)の通気口?を外したところに隠してますけど、そんな簡単なところ、すぐに見つかってしまいそうでヒヤヒヤします。もしかしたらすぐに見つけてほしいのかな? 犯罪者が誰かにとめてほしい心理描写…なのでしょうか。

 

乾いた笑いが効いている

喜びがなく先が見えないのですが、そこまで重苦しくないのがこのドラマの魅力でもあります。

例えば初めてのメス密造に挑む時に、ウォルターがパンツ一丁でゴムエプロンを付けるというシーン。ジェシーが「まじかよ…」とドン引きするなど絵面としてのインパクがすごかったです。第1話の冒頭がそのパンツ一丁なのですが、ウォルターのお腹がぷよぷよしてるんですよね。中年太りだわ~(笑)なんて思ってしまうんですが、後から抗がん剤治療が始まったウォルターはすごい痩せて別人のようになってるので、もしかしたらそのために最初だけ役づくりで体重を増やしたんじゃないか?と思うくらいに、役者さんの演技がはまってます。

化学教師 ウォルター・ホワイト

↑まさにこの恰好ですね。さすがにパッケージではシャツ着てた。

Amazonプライムでは第1話のみ無料で視聴可能のようです。

 

ブレイキング・バッド感想一覧

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